法律コラム

Q&A<コンプライアンス・不祥事対応>個人情報保護法における『個人情報』の第三者提供のルールを弁護士が解説します。

2022.03.22

個人情報は、いかなる場合でも、第三者に提供してはいけないのですか?

あらかじめ本人の同意を得ることなく、個人データを第三者に提供することは原則として禁止されていますが、個人情報保護法では提供できるケースも規定しています。

1 個人情報保護法とは?

 はじめに、個人情報保護法(正式名称:個人情報の保護に関する法律)とは、個人情報が適正に取り扱われるように、個人情報取扱事業者の義務等が定められています。

 

<個人情報取扱事業者の義務の具体例>

 ①利用目的の特定、変更、制限

 ②適正な取得

 ③利用目的の通知又は公表

 ④個人データの正確性の確保

 ⑤個人データの安全管理措置

 ⑥第三者提供の制限

 ⑦第三者提供の記録の作成

 ⑧第三者提供を受ける際の確認

 ⑨個人データの開示、訂正、利用停止の対応

 ⑩適切な苦情処理

 

2 第三者提供の制限(原則)

 個人情報保護法では、個人情報取扱事業者が、あらかじめ本人の同意を得ずに、個人データを第三者に提供することを禁止しています。

 つまり、原則として、個人データを第三者に提供する場合は、事前に本人の同意を得ておく必要があるのです。

 また、事業内容等により、個人情報を第三者に提供することが予定されている場合であれば、利用目的にも明示しておく必要があります。

 ただし、以下の場合は第三者提供に該当しません。

 

 <第三者提供に該当しないケース>

 ①個人情報取扱事業者が、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データの取扱いの全部または一部を委託する際に、当該個人データが提供される場合。

 (例:商品配送のための宅配業者への情報提供)

 ②合併やその他の事由により事業が承継され、個人データが提供される場合。

 (例:合併、会社分割、事業譲渡等に伴った個人データの提供)。

 ③特定の者との間で共同で利用される個人データが、当該特定の者に提供される場合。

 (例:グループ企業で総合的なサービスを提供する場合)

 *ただし、共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的等を、あらかじめ本人に通知する必要があります。

 

3 第三者提供が認められる4つのケース

 以上の原則に対し、個人情報保護法では、あらかじめ本人の同意を得ることなく、第三者に個人情報を提供できるケースについても定められています。

 

①法令に基づく提供の場合。(例:警察・検察、裁判所、税務署等からの照会に基づく回答)

②人の生命、身体又は財産の保護のために必要があり、且つ本人の同意を得ることが困難な場合。(例:災害時、被害者情報である家族等戸の共有)

③公衆衛生の向上または児童の健全な育成のために、特に必要があり、且つ本人の同意を得ることが困難な場合。(例:児童虐待の疑いがあった時、警察や学校間で家庭情報の共有)

④国の機関もしくは地方公共団体、またその委託を受けた者が、法令に従った事務を遂行する際に、それに協力する必要があり、且つ本人の同意を得ることで事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある場合。(例:国や地方公共団体の統計調査等の回答)

 

4 オプトアウトによる第三者提供

 さらに、個人情報保護法では、以下の①から⑤の事項については、あらかじめ本人に通知するとともに、個人情報保護委員会に届け出た場合、本人の同意を得ることなく個人データを第三者に提供することを認めています。

 これを「オプトアウトによる第三者提供」といい、個人情報保護法では、その要件や条件が詳細に規定されています。

 

<本人通知と委員会への届け出が必要な事項>

 ①第三者への提供を利用目的とすること

 ②第三者に提供される個人データの項目

 ③第三者への提供方法

 ④本人の求めに応じて第三者への提供を停止すること

 ⑤本人の求めを受け付ける方法

 

5 ポイントまとめ

1.個人情報保護法では個人情報取扱事業者の義務等が定められている。

2.個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ることなく、個人データを第三者に提供することが原則として禁止されている。

3.個人情報保護法では、あらかじめ本人の同意を得ることなく、個人データを第三者に提供できるケースを規定している。

 

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