法律コラム

Q&A<コンプライアンス・不祥事対応>個人情報保護法の観点から個人情報の利用停止・消去の請求について、弁護士が解説します。

2022.06.21

以前会員登録した化粧品会社に対し、ダイレクトメール送付の停止を依頼しましたが、私の個人情報の消去を求めることができますか?

個人情報保護法に従い、個人情報の消去を請求できます。

1 個人情報保護法とは

 はじめに、個人情報保護法(正式名称:個人情報の保護に関する法律)とは、個人情報が適正に取り扱われるように、個人情報取扱事業者の義務等が定められています。

 

<個人情報取扱事業者の義務の具体例>

 ①利用目的の特定、変更、制限

 ②適正な取得

 ③利用目的の通知又は公表

 ④個人データの正確性の確保

 ⑤個人データの安全管理措置

 ⑥第三者提供の制限

 ⑦第三者提供の記録の作成

 ⑧第三者提供を受ける際の確認

 ⑨個人データの開示、訂正、利用停止の対応

 ⑩適切な苦情処理

 

2 保有個人データの利用停止等の請求

 個人情報保護法では、本人(個人情報によって識別される特定の個人)が個人情報取扱 事業者に対して、以下のいずれかの理由がある場合、保有個人データの利用停止や消去(以下総称して「利用停止等」といいます。)を請求することができることを認めています。

 

①個人情報の目的外利用

②個人情報の不適正利用

③個人情報の不正取得

④個人情報取扱事業者が利用する必要がなくなった場合(*)

⑤個人データの漏えい等本人の権利又は正当な利益が害されるおそれがある場合(*)

 

 そのため、個人情報取扱事業者は、その請求に上記理由があることが判明したときは、違反是正や本人の権利利益の侵害防止のために必要な限度で、遅滞なく、個人情報の利用停止又は消去に応じなければなりません。

 

*上記④及び⑤の理由は、2022年4月1日に施行された個人情報保護法改正によって、新たに追加されました。

 

3 個人情報取扱事業者が利用停止請求等に応じることが困難な場合

 もっとも、個人情報保護法では、利用停止等に多額の費用を要する場合その他の利用停止等を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するために必要な代替措置をとるときは、個人情報取扱事業者は、本人の請求に応じなくても、責任が発生しないことになっています。

代替措置の具体例(*)

  • 既に市販されている名簿の刷り直し及び回収作業に多額の費用を要するとして、名簿の増刷時の訂正を約束する場合や必要に応じて金銭の支払いをする場合
  • 個人情報保護委員会への報告の対象となる重大な漏えい等が発生した場合において、当該本人との契約が存続しているため、利用停止等が困難であるとして、以後漏えい等の事態が生じることがないよう、必要かつ適切な再発防止策を講じる場合

*個人情報保護委員会・個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(2021年10月改正)137頁から引用

4 今回の相談に対する回答

 今回の相談では、④「個人情報取扱事業者が利用する必要がなくなった場合」に該当するかどうかが問題になります。

 「利用する必要がなくなった」とは、「利用目的が達成され当該目的との関係では当該保有個人データを保有する合理的な理由が存在しなくなった場合や利用目的が達成されなかったものの当該目的の前提となる事業自体が中止となった場合」をいいます。

 個人情報保護委員会・個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(2021年10月改正)134頁でも、今回の相談と同様のケースにおいて、個人情報取扱事業者が利用する必要がなくなったケースに該当すると紹介しています。

 そうすると、今回の相談では、化粧品会社に対して、個人情報の利用停止等を求めることが可能と思われますので、化粧品会社に対し、個人情報の利用停止等を請求することになります。

 

5 ポイント

1.個人情報保護法では個人情報の利用停止や消去を請求できる要件を規定している。

2.利用停止等の請求に理由がある場合、個人情報取扱事業者は、必要な限度で対応しなければならない。

3.対応が困難な場合、代替措置を選択できることもある。

 

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