法律コラム

Q&A<知的財産権・著作権トラブル対応>放置していると、思わぬトラブルに?著作権について弁護士に相談すべきケース3選

2023.02.14

 インターネットやSNSが普及した現代社会では、各個人がより多くの情報を発信・アクセスでき、利便性が向上された反面、他人の著作物 (コンテンツ、動画、写真、小説、音楽等) を不正に活用することも容易になり、著作権トラブルも増えています。

相談例

  • 「私が制作したコンテンツがインターネット上に無断で流通している」
  • 「著作権侵害であるという警告書が届いた」
  • 「著作権に関する契約書を渡されたが、締結していいかどうかわからない」

著作権トラブルを放置しておくと

 著作権トラブルを放置しておくと様々な不利益が拡大し、対応を開始したときには、既に大きな損害を発生している場合もあります。これは、侵害されている側・侵害している側双方にとっていえることです。そのため、著作権トラブルは弁護士に相談し、早期解決を図るのが得策です。

(1) 著作権を侵害されている側の場合

 まず、著作権法の要件を充たす著作物 (コンテンツ、動画、写真、小説、音楽等) を創作すれば、その著作物には著作権が発生します。その著作物を創作した個人又は法人 (著作者) は著作権者となります。

 著作権が生じた著作物は、著作権法において、原則として、著作権者にその著作物を複製、譲渡、貸与したり、他人にその利用を許諾することができる権利が付与されています。

 著作権が侵害されているということは、著作物を他人が無断でコピー (複製) したり、無断で複製したものを販売したりして利益を得ているということです。

 言い換えれば、これは、著作権者が本来、市場で得られたはずの経済的利益を他人に不当に奪われているということを意味します。そのため、著作権を侵害されている状態を放置しておくと、著作権者が本来得られるはずの経済的利益が奪われ続け、不利益がどんどん大きくなってしまいます。

 また、単純な原本のコピー (複製) による侵害だけではなく、著作物が改変され、いわゆる二次的著作物 (原著作物を真似て新たに創作された類似の著作物) が創作され、それが市場に出回ってしまうと、そもそも誰が本当の著作者で、誰が正当な著作権者であるかが不明確となってしまうこともあります。

 そうなると、せっかく創作した著作物について、誰が著作者又は著作権者であるかという外部的認知のみならず、自分自身が著作権者であるという主張も複雑かつ困難となりかねません。

 また、逆に、他人 (侵害者) に著作権を主張されるはめになってしまい、真の著作権者であるにもかかわらず、著作権者がその著作物の利用を制限されたり、著作権者であるという主張が妨げられたり、想定外の不利益を被ることにもなりかねません。

 さらに、放置している期間によっては、消滅時効という制度に阻まれ、いざ侵害者に対して損害賠償請求等をしようとしても、権利行使ができないという事態も想定されます。

(2) 著作権を侵害している側の場合

 まず、他人の著作物を無断でコピー (複製) したり、無断で複製したものを販売したりして経済的利益を得ると、その行為は著作権侵害にあたり、著作権者による差止めや損害賠償請求の対象になります。

 例えば、他人の著作物を侵害しているとして警告等を受けたにもかかわらず、それを放置して著作権侵害を続けていると、多額の損害賠償を請求されたり、差止請求に伴って既に完成している商品の廃棄を請求されたりすることもあります。

 また、侵害の態様によっては、刑事罰 (懲役・罰金) の対象にもなり (著作権法119条以下) 、侵害者を雇用している法人等についても、同時に刑事罰が科されることもあります (同法124条・両罰規定) 。

著作権について弁護士に相談すべき3つのケース

ここでは、具体的に弁護士に相談すべき3つのケースについて紹介します。

【ケース1】著作権の契約を結ぶ際

 著作権の契約を結ぶ場合としては、主に、著作権者が第三者に対し、①その著作物についての著作権の全部又は一部を譲渡する場合 (譲渡契約) 、②その著作物の利用を許諾する場合 (ライセンス契約) が想定されます。

 その際、締結する契約書の内容に不備・漏れ等があると、後々、契約の相手方に想定外の利用行為をされたり、著作権者としての権利主張が制限されたりすることもあります。

 例えば、①著作権譲渡でいうと、著作権の譲渡を受ける側である場合、複製権や譲渡権のみならず、翻案権 (著作物に改変等を加える権利、著作権法27条) 等についても譲り受けたい場合には、その旨を別途明記しなければなりません (同法61条2項) 。反対に、この内容が明記されていない場合には、翻案権は譲渡されていないと解釈されます。そうであるにもかかわらず、譲受人がその著作物を真似て二次的著作物を創作すると、譲渡人 (元の著作権者) の著作権 (翻案権) を侵害したとしてトラブルになる可能性があります。

 また、②利用許諾 (ライセンス契約) でいうと、著作権者として、他人にその著作物の利用許諾をする場合、その許諾する範囲 (利用方法や期間等の条件) を設定することができます。もっとも、この許諾する範囲について、契約内容として明確にしておかなければ、想定外の態様で著作物が利用され、著作権者が経済的損害等の不利益を被る可能性もあります。

 そのため、弁護士に事前に契約内容を相談したり、契約書をチェックしてもらったりした上で契約を結ぶことで、このような不利益は回避できます。

【ケース2】自身の著作権を侵害された際

 著作権を侵害されている状態を放置しておくと、著作権者が本来得られるはずの経済的利益が奪われ、不利益がどんどん大きくなってしまいます。そこで、著作権者としては、何らかの対応を早めにとることが必要です。

 自分自身の著作権を侵害された場合、侵害者に対して訴訟を起こし、差止請求や損害賠償請求等をすることも可能です。しかし、民事訴訟をするには費用も時間もかかります。そのため、民事訴訟を提起する前に、まずは、自身の著作権を侵害している相手方に対し、「警告」をすることが考えられます。警告では、主に、自身が対象著作物の著作権者であること、相手方が自身の著作権を侵害していること、侵害行為を停止することを通知します。

 その際には、弁護士名義で警告文を送ると効果的で、この警告をしたことによって侵害行為が止むケースも多々あります。

 しかし、自身で警告をしようとしても、具体的にどのような内容の警告をすればよいか分からない場合もあるでしょう。警告をする際には、自身が対象著作物の著作権者であることや相手方の侵害行為を具体的に特定し、法的に意味のある警告をしなければ、侵害者に相手にされず、効果的な警告とにはなりません。

 そのため、自身の著作権を侵害されていると考えた場合には、弁護士に相談して、警告文の内容を作成してもらい、実際、弁護士から弁護士名義で警告することで、不利益の拡大を防ぐことができます。

【ケース3】著作権侵害の訴訟になった際

 著作権侵害の訴訟になる場合としては、原告側・被告側の双方の立場が可能性が考えられますが、どちらにしても、訴訟になれば、著作権法に関する法的知識のみならず、訴訟手続 (民事訴訟法) に関する知識も不可欠となります。

 著作権法について、民事訴訟では、「著作物」・「著作権者」・「著作権侵害」の該当性や具体的な「損害額」の算定について緻密な認定がされます。

 そのため、裁判所に適切な認定をしてもらうためにも、法的に意味のある主張・反論を的確にする必要があります。訴訟になった後でも、裁判の中で和解をすることも可能ですが、判決にしても、裁判上の和解にしても、いったん確定してしまうと、その内容を後から変更等することは困難となります。

 また、民事訴訟の場合、理論上は、本人訴訟 (弁護士に依頼しない) も可能ですが、法律の専門家である弁護士に訴訟代理人となってもらい、当事者の言い分等を適切に訴訟の場で表現してもらった方が利益を最大限確保し、損害を最小限にとどめるためには有効です。

 また、いったん訴訟になると、紛争解決までにはある程度の期間を要します。原告又は被告として自ら訴訟を進める場合には、裁判期日に出廷したり、期限までに主張書面を作成したりしなければならず、大きな負担 (労力・時間) を強いられます。

 そのため、訴訟になったら、弁護士に相談して訴訟追行や和解交渉等を行ってもらう方が、結果的には当事者の負担や不利益を軽減し、より満足のいく結果につながるでしょう。

(まとめ) 著作権問題を弁護士に依頼するメリット

 著作権問題は、法律問題の中でも専門性が高い分野です。そのため、著作権問題は、著作権法を中心とする専門的な知識・経験がなければ適切な対応をすることが困難です。

 その一方で、著作権問題を中心に取り扱っている弁護士であれば、著作権法に関する知識・理解についてはもちろん、実際の著作権問題の事案対応経験もあるので、より迅速かつ効果的な対応を提案できます。

 弁護士法人かける法律事務所には、著作権問題に対応できる弁護士が複数、在籍しております。大切な著作権が侵害されたと思ったら、まずはお気軽にご相談してください。