法律コラム

Q&A<知的財産権・著作権トラブル対応>新聞記事は著作物ですか?新聞記事の利用方法の注意点について著作権法の観点から弁護士が解説します。

2023.06.27

新聞記事をインターネットで掲載する場合、著作権の問題が生じますか?新聞記事は「著作物」(=著作権の対象)ですか?

多くの新聞記事は著作物といえ、著作権の対象となります。そのため、新聞記事をインターネットで無断掲載すると、著作権の問題(トラブル)が発生することがあります。

1. 新聞記事は著作物といえるか?

 著作権法10条2項は、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」が著作物に該当しないと規定しています。

 もっとも、多くの新聞記事は、事件の選択、情勢分析、文書上の工夫等が加わっているため、「思想又は感情が創作的に表現」されているため、著作物に該当します。

 「新聞著作権に関する日本新聞協会編集委員会の見解」(日本新聞協会)でも、「報道・評論・解説などの一般記事、報道写真、図案、編集著作物」が常に著作権保護の対象になるという見解を指摘しています。

*「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(著作権法10条2項)とは、天気予報、人事異動、死亡記事のように単に事実を羅列したにすぎない、誰が書いても同じ内容となるような記事をいいます。

2. 新聞記事が著作物であることを認めた裁判例

 東京地判令和4年11月30日(令和2年(ワ)12348号)では、以下のとおり、新聞記事が著作物として著作権の保護対象になりうると判示しています。

① 事案の概要

 本件は、原告(新聞会社)の新聞記事(本件各記事)につき、被告が、これらの画像データを作成して記録媒体に保存した上、当該画像データを被告社内のイントラネット上にアップロードして被告従業員等が閲覧できる状態に置いたことは、原告の本件各記事に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害する旨を主張して、原告が、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。

② 判旨ー新聞記事の著作物性を肯定

 「本件各記事は、いずれも、担当記者が、その取材結果に基づき、記事内容を分かりやすく要約したタイトルを付し、当該記事のテーマに関する直接的な事実関係を端的に記述すると共に、関連する事項として盛り込むべき事項の選択、記事の展開の仕方、文章表現の方法等についても、各記者の表現上の工夫を凝らして作成したものであることがうかがわれる。

 したがって、本件各記事は、いずれも「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」すなわち著作物(法2条1項1号)と認められるのであって、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」(法10条2項)には当たらない。

 これに対し、被告は、本件各記事は著作物に当たらないとして縷々主張する。しかし、著作物といえるための創作性の程度については、高度な芸術性や独創性まで要するものではなく、作成者の何らかの個性が発揮されていれば足りる。

 このような意味での創作性は、内容における虚構性を当然の要素ないし前提とするものではないから、新聞記事がその性質上正確性を求められることと何ら矛盾せず、両立し得るものであることは論を俟たない。」

3. 新聞記事をインターネット上で利用する場合の注意点

 多くの新聞記事は著作物といえ、著作権の保護対象になります。そのため、新聞記事をインターネット上で利用する場合には注意しなければなりません。

 「新聞記事は多くの人に知ってもらうことを目的としているので問題がない」、「個人のウェブサイトに掲載するから問題ない」、「営利目的ではない」という安易な考えは、著作権トラブルを発生させる原因となりかねません。

 つまり、新聞記事を無断でウェブサイトに掲載してしまうと、著作権(複製権及び公衆送信権)の侵害となります。

 そのため、著作権侵害といわれないためにも、①著作権者の承諾を得ること、又は②「引用」の要件を満たすことが必要です。

① 著作権者の利用許諾

 もちろん、新聞記事を利用する場合、著作権者の利用許諾を得ることができれば、著作権侵害にはあたりません。著作権者の利用許諾を得ることは、めんどくさいと感じるかもしれませんが、新聞会社では、利用条件を定め、新聞記事の利用のための申込フォームも準備しています。

 新聞記事を利用するに際しては、著作権者の利用許諾を得ることも一度検討してもいいかもしれません。

② 「引用」(著作権法32条)の要件を満たすこと

 公表された著作物は、引用して利用することができます(著作権法32条)。新聞記事も同様に「引用」の要件を満たせば、著作権者の利用許諾がなくても、利用できます。

 ただ、「引用」といえるためには、「公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」とされており、「引用」していることを明記するだけでは、適法な引用とは判断されない場合もあります。新聞記事を引用する場合、以下のポイントを意識して行えば、適切な引用といいやすくなります。

  • 出典を明示すること(●年●月●日付け●●新聞・朝刊から引用)
  • 報道、批評、研究その他の引用の目的が正当といえること
  • 質的にも量的にも引用先が「主」といえ、引用部分が「従」といえること
  • 引用部分を「 」(カギかっこ)でくくる等本文と引用部分が明確に区別できること

4. 本コラムのポイント

  1. 多くの新聞記事は著作物といえ、著作権の保護対象となります。
  2. 新聞記事を利用する場合、著作権侵害といわれないように注意する必要があります。
  3. 著作権侵害といわれないためにも、著作権者の利用許諾を得たり、「引用」(著作権法32条)の要件を満たすように利用方法を検討する必要があります。

5. 弁護士法人かける法律事務所が対応できること

 弁護士法人かける法律事務所には、著作権問題に対応できる弁護士が在籍しています。著作権侵害で警告や訴訟提起を受けたら、まずは、ご相談してください。お問い合わせは、こちらです。

弁護士に依頼できること

  1. 著作権を侵害しているかどうか知りたい。
  2. 損害賠償の減額交渉できるかどうか知りたい。
  3. 解決金を支払いたいが、しっかりと和解契約書(示談書)を作成したい。
  4. 著作権トラブルについて民事訴訟が提起され、訴状が届いた。
  5. 話し合いがまとまらず、民事訴訟に発展するかもしれない。

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