法律コラム

Q&A<インターネット誹謗中傷対応>Twitter (X) での誹謗中傷への対応方法について、弁護士が解説します。

2023.08.17

私は、いわゆるインフルエンサーとして、ライブ配信やTwitter (X) で発信をしています。最近、Twitter上で、いわゆるアンチから誹謗中傷を受けています。投稿の削除やアカウントの中の人物を特定したいのですが、可能でしょうか?

誹謗中傷の内容や投稿日によっては、削除や発信者の特定ができる可能性があります。

1. Twitterにおける誹謗中傷について

 Twitter(最近、サービス名が「X」に変わりましたが、便宜上、この記事では「Twitter」と記載します。)は、いまや世界で知らない人がいないインターネットSNSサービスです。日本においては、2022年1月時点で、月間約5,895万人もの アクティブユーザーがいると言われています。

 このように、私達の日常生活の一部にもなっているといってよいほど浸透しているサービスですが、その利便性の一方で、匿名サービスであることを利用した誹謗中傷が問題になっています。

 Twitter上で誹謗中傷がなされた場合、投稿が一気に拡散することもあるため、大きな社会問題の一つとなっています。

 この記事では、Twitterで誹謗中傷を受けた際の対応方法(①削除の方法、②発信者の特定の方法)について、解説したいと思います。

2. 投稿を削除するための方法について

ウェブフォームからの削除請求

 Twitter上で誹謗中傷の投稿がされた場合、Twitterのウェブフォームから直接削除請求を行うことができ、投稿内容によっては、削除の対応をしてもらえることもあります。

 もっとも、ウェブフォームからの削除請求については、強制力はないため、対応をしてもらえないこともあります。

裁判手続による削除請求(仮処分手続)

 ウェブフォームからの削除請求に応じてもらえない場合、裁判所に対して、投稿の削除を求める手続を申し立てることができます。この場合、民事訴訟(いわゆる裁判)によって削除を求めることもできますが、一般的には、民事訴訟よりも迅速に削除が可能な「仮処分」という手続を申し立てることが多いです。

 裁判手続による削除請求が認められるには、その投稿によって人格権(名誉)が違法に侵害されていること、より具体的にいえば、インターネット上の表現の自由に鑑みても、当該投稿による人格権侵害(名誉毀損)の度合いが受忍すべき限度を超えている、といえる程度の投稿内容である必要があります。

 例えば、単に「●●さん(特定の個人)はちょっと変な人である」とか「●●(特定の会社)は雰囲気の悪い会社である」という程度の投稿内容では、受忍すべき限度を超えた名誉毀損であるとは判断されにくく、削除請求が認められない可能性があります。

 また、投稿内容が受忍すべき限度を超えた名誉毀損であるとしても、削除請求が認められるためには、原則として、削除を請求する側が、①当該投稿が公益目的での投稿ではないこと、又は、②当該投稿が真実ではないことのいずれかを、ある程度証明する必要があります。

 特に、会社に対する誹謗中傷の場合、公益目的性(上記①)が肯定される可能性が高いため、当該投稿の内容が真実ではないこと(上記②)を会社が証明できるか否かによって、削除請求が認められるかどうかが決まります。

 仮処分手続での削除請求の場合、早ければ申立てから1か月程度で削除を命じる決定がなされることもあります。

3. 投稿者を特定するための方法について

 Twitter上で誹謗中傷となる投稿が行われた場合、投稿内容や投稿時期によっては、発信者を特定できる可能性があります。

 もっとも、削除請求の場合と異なり、発信者情報の開示については、原則として、ウェブフォームからの請求では応じてもらうことができません。

 そのため、発信者情報の開示については、基本的に、裁判手続による開示請求を行って、発信者を特定していくことになります。

裁判手続の一般的な流れについて

  1. Twitter社(X社)に対して、発信者情報(当該投稿を行ったアカウントがTwitterにログインした際のアクセスログ(ログインに用いられたIPアドレスやログイン日時)の開示を求める裁判手続(仮処分手続)を行う
  2. Twitter社(X社)からログイン情報が得られた場合、発信者がログインした際の通信を媒介したアクセスプロパイダ(NTTドコモやソフトバンク等)に対して、回線契約者の名前・住所等の開示を求める裁判手続を行う

 Twitterでは、発信者がログインした際の通信記録(ログ)が残るようになっているため、上記のように、ログイン情報を経由して発信者を特定していくことが一般的な特定の方法になります。

 もっとも、最近は、Twitterのアカウント登録時に携帯電話番号等の登録を求められるようになっているため、ログイン情報の開示に加えて、当該投稿を行ったアカウントに登録された携帯電話番号等の登録情報の開示を併せて求め、開示が得られた場合には、弁護士会の照会(弁護士法人23条の2)を通じて、携帯電話会社等から回線契約者の開示を得るというルートもあります。

 ログイン情報を経由した場合、古いログイン情報の開示を受けても、通信を媒介したプロパイダに記録が残っていないこともあるため、そのような場合には、携帯電話番号等の登録情報から発信者を特定するルートが有効となります。

注意点

 以上が、会社に対する誹謗中傷を行った投稿者を特定するための方法・手順になりますが、注意点としては、以下の2点が挙げられます。

①単なる悪口といった程度の投稿では開示請求が認められづらいこと

 これまでの裁判例等からいえることですが、発信者情報の開示が認められるには、一般的に、投稿内容が、対象者の社会的信用を低下させるような具体的な事実の摘示である場合や、度を越した侮辱であることが必要があります。

 したがって、「●●さんはちょっと変な人である」「●●さんはちょっと頭が悪い」等のような、単なる悪口の程度の投稿では開示請求は認められれないことがあります。

②迅速に開示請求手続を進める必要があること

 上述のように発信者情報の開示手続は、ログイン情報を経由して進めていくことが多いです。ただ、一般的に、インターネットプロパイダ(NTTドコモ、ソフトバンク等)における通信記録の保存期間は、3~6か月程度であるといわれています。そのため、誹謗中傷となる投稿が行われた場合、迅速に開示請求手続に着手して進めていく必要があります。

4. プロパイダ責任制限法の改正による新たな裁判手続について

 SNS上の投稿についての発信者の特定のためには、従来、①SNSの運営会社に対する発信者情報開示請求手続と②通信を媒介したプロパイダに対する発信者情報開示請求という2段階の手続を踏む必要があり、煩雑で時間がかかるという問題がありました。

 この問題を解消するために、今般、プロパイダ責任制限法が改正(2022年10月に施行)され、「発信者情報開示命令」という新たな裁判手続が創設されました。

 この手続は、簡単にいえば、発信者の特定をより簡易迅速に行うために、プロパイダの協力を前提とした上で、従来の2段階の手続を一体化した手続となります。

 この新たな裁判手続については、現状、必ずしも運用が固まっているわけではありませんが、今後の制度の運用によって、活用できるケースが増えていくと思われます。

5. ポイント

  1. Twitterでの投稿を削除する方法としては、ウェブフォームからの削除請求と裁判手続を利用した削除請求があり、裁判手続によらなければ削除ができない場合があります。
  2. Twitter上の投稿の発信者を特定するためには、基本的に、裁判手続による発信者情報開示請求をする必要があり、Twitterに対する開示請求とアクセスプロパイダに対する開示請求の2段階の手続を踏む必要があります。
  3. 投稿の削除や発信者情報開示請求は、必ず認められるわけではなく、投稿内容(誹謗中傷の程度)が重要といえます。また、実際に発信者の特定に至るには、迅速に開示請求手続を行う必要があります。

6. 弁護士法人かける法律事務所のサービスのご案内

 弁護士法人かける法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷における削除請求、発信者情報開示請求、損害賠償請求その他お客様のニーズに合わせたサービスを提供しています。

 「投稿が違法なのか」「どのような流れで解決に至るのか」「どれくらいの時間と費用がかかるのか」等と言ったご不安や疑問に対して、法的な観点からアドバイスいたします。

 裁判手続を利用せずに削除できる場合もあります。また、裁判手続が必要となる場合、裁判手続の内容や費用についても、しっかりと説明させていただきます。

 当事務所では、「安心を提供し、お客様の満足度を向上させる」という行動指針(コアバリュー)に従い、各サービスを提供していますので、是非、お問合せください。

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鄭 寿紀

このコラムの執筆者

弁護士鄭 チョン寿紀スギSugi Jeong

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