新規事業を開始するため、取引先との間で取引条件を協議・交渉しています。取引や契約を行うに際して、法的観点から注意すべきポイントを教えてください。
法的観点から契約自由の原則と例外を意識しながら、リスクの内容や程度について注意する必要があります。
契約自由の原則
取引や契約を行う際には、契約自由の原則があるということを知っておく必要があります。
- 契約を締結する・締結しない自由
- 契約相手を選ぶ自由
- 契約方式の自由
- 契約内容を決める自由
① 契約を締結する・締結しない自由
まず、契約を締結する前であれば、取引を断ったとしても、原則として、責任を負いません。これは、取引を断られたとしても、原則として、責任追及できないということも意味します。つまり、当事者間では、取引交渉を開始したとしても、契約を締結する義務を負うものではなく、契約を締結する・締結しない自由があることを意味します。
もっとも、契約準備段階に入って、緊密な関係に至る場合、相互に相手方の人格や財産等を侵害しない信義則上の注意義務を負うことがあります。この場合、契約交渉を不当に破棄する場合、損害賠償責任(いわゆる信頼利益)を負うこともあるため、注意する必要があります。これを、法律用語では「契約締結上の過失」といいます。
② 契約相手を選ぶ自由
契約自由の原則の一つとして、契約相手を選ぶ自由があります。契約の法的拘束力は、原則として契約当事者間にしか及ばず、第三者に効力を生じません。そのため、契約を締結するとき、契約相手を適切に選択する必要があります。契約は、2当事者間で締結することが多いですが、2名以上でも、問題ありません。
取引の性質・実態を考慮して、契約相手を選ぶ必要がありますし、グループ会社を契約相手とする取引では、契約によって発生する権利義務を担保するために、契約相手の選択は慎重に判断する必要があります。
③ 契約方式の自由
契約方式の自由から、口頭による契約や電子契約も契約として有効に成立します。
口頭による契約
口頭による契約も契約方式の自由から原則として有効です。ただ、契約書がない場合、事後的に紛争・トラブルが発生したとき、合意内容(取引条件)を特定する必要があります。契約書がない場合、以下の事情を考慮して、合意内容(取引条件)を特定することになります。
- 担当者間のEメール・チャット・議事録
- 発注書、受注書、納品書、請求書
- 取引の慣習
- 法律(民法)のルール
民法522条2項:
- 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
電子契約
電子契約とは、紙媒体に代わり電子データに電子署名を行うことによって締結する契約をいいます。電子契約の特徴は、以下のとおりです。
- 物理的な「紙」がない(電子データのみでオンラインで契約可能)。
- 書面による契約と同様の証拠力がある。
- 印紙代は不要となる。
- 押印・製本・郵送が不要となる。
④ 契約内容を決める自由
契約自由の原則の一つとして、契約内容を決める自由があります。もっとも、契約内容を契約当事者間で合意しないとき、契約ルールを定める民法の規定が適用されることになります。
民法と契約類型(典型・非典型)
- 民法は13種類の契約ルールを定め、この13種類の契約を典型契約(有名契約)といいます。
- 典型契約以外の契約を非典型契約(無名契約)といいます。
- 典型契約は、特別な合意がない限り、民法のルールが適用されます。
典型契約の具体例:
- 贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解
非典型契約の具体例:
秘密保持、ライセンス、フランチャイズ、システム開発、業務提携
取引当事者には、契約内容を決める自由がありますが、法令によって制限されることもあるため、注意する必要があります。法令による制限は、以下のとおりですが、法令に違反する場合、契約内容が無効になるとともに、コンプライアンス(法令遵守)の観点から問題となるケースがあります。
- 公序良俗に違反する契約内容
- 強行規定に違反する契約内容
- 取締法規に違反する契約内容
注意すべき法令:
- 独占禁止法、下請法、建設業法、消費者契約法、借地借家法、労働基準法
契約書の作成は弁護士に依頼できます。
契約書の作成は、弁護士に依頼できます。企業法務や紛争・訴訟対応に精通している弁護士だからこそ、できることが多くあります。特に、顧問契約サービスを利用すれば、契約書の作成について、よりリーズナブルで、迅速かつ適切な対応が可能となり、円滑な取引の促進につながります。
具体的な相談例:
- 契約書を作成したいが、契約書のひな形がほしい。
- 取引先から契約書を提示されたが、リスクがないか、問題がないかどうか知りたい。
- 契約書を修正したいが、修正方法がわからない。
- 覚書を作成したい。
- 契約書を作成しない場合、リスクの内容や程度(民事・刑事・行政)を知りたい。
- 法務部がないため、契約書チェックに対応できる人材がいない。
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