法律コラム

Q&A<独占禁止法・下請法>発注事業者 (企業) の観点からフリーランス新法の期日における報酬支払義務 (60日ルール) について、弁護士が解説します。

2024.10.07

よくある相談例

  1. フリーランス新法って、なんですか?
  2. フリーランスと取引する際、報酬支払の時期について規制はありますか?
  3. フリーランスとの間で取引しましたが、報酬支払時期についてトラブルとなっています。

フリーランス新法とは?

 フリーランス新法とは、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」の略称です。フリーランス・事業者間取引適正化等法とも呼ばれます。

 フリーランス新法は、令和6(2024)年11月1日から施行されます。

 フリーランス新法は、業種や業界の限定はありませんし、下請法が規定する資本金要件もありません。つまり、フリーランス新法は、フリーランスとの間で業務委託取引を行うすべての企業が適用の対象です。

 フリーランス新法は、①フリーランスと発注事業者との間の取引の適正化と②フリーランスの就業環境を整備することによって、フリーランスが安心して働ける環境の整備を目的としています。

期日における報酬支払義務

 発注事業者(特定業務委託事業者)は、発注した給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定めて、その日までに報酬を支払わなければなりません(60日ルール)。

 支払期日は、具体的な日を特定できるように定める必要があります。

フリーランス新法4条(報酬の支払期日等)1項

特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた日。次項において同じ。)から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

期日における報酬の支払義務のポイント

 60日のルールの起算日は、物品の製造・加工委託では、検査の有無とは関係なく、実際に発注事業者が物品を受け取り、自己の専有下に置いた日となります。検査が完了した日ではなく、物品を受領した日を起算日とすることについて、注意する必要があります。

 もっとも、フリーランスの責めに帰すべき理由があって、委託内容と適合しておらず、やり直しが必要な場合、やり直し後の給付を受領した日が支払期日の起算日となります。

支払期日を定めなかったとき等は、どうなりますか?

 支払期日を定めなかったときは、物品等を実際に受領した日が支払期日とみなされます。そのため、フリーランスとの間で業務委託取引を行うときは、支払期日を定めるように注意しなければなりません。

 また、支払期日を物品等を受領してから、60日を超えて支払期日を定めたときは、受領した日から起算して60日を経過する日が支払期日とみなされます。

フリーランス新法4条(報酬の支払期日等)2項

前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。

60日ルールの例外-再委託の取扱い

 元委託者から受けた業務の全部又は一部を発注事業者がフリーランスに再委託する場合、60日ルールの例外が規定されています。再委託であることを明示すること等を条件として、元委託者による支払期日から起算して30日以内のできる限り、短い期間内で定めることもできます。

明示すべき事項

  1. 再委託である旨
  2. 元委託者の名称(識別できる情報)
  3. 元委託業務の対価の支払期日

フリーランス新法4条(報酬の支払期日等)3項

前二項の規定にかかわらず、他の事業者(以下この項及び第六項において「元委託者」という。)から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る業務(以下この項及び第六項において「元委託業務」という。)の全部又は一部について特定受託事業者に再委託をした場合(前条第一項の規定により再委託である旨、元委託者の氏名又は名称、元委託業務の対価の支払期日(以下この項及び次項において「元委託支払期日」という。)その他の公正取引委員会規則で定める事項を特定受託事業者に対し明示した場合に限る。)には、当該再委託に係る報酬の支払期日は、元委託支払期日から起算して三十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

*60日ルールの例外が認められるためには、フリーランス新法が規定する再委託の明示等の条件を順守する必要があります。
*60日ルールの例外にかかわらず、発注事業者は、元委託者から前払金の支払を受けたときは、再委託をしたフリーランスに対して、資材の調達等業務の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならないとされているので、注意が必要となります(フリーランス新法4条6項)。

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細井 大輔

このコラムの執筆者

代表弁護士細井 大輔Daisuke Hosoi

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