法律コラム

Q&A<株主総会・取締役会対応>取締役の競業避止義務の内容や注意点について、解説します。

よくある相談

  1. 取締役として在職中に会社と競業する事業を行うことはできますか?
  2. 競業避止義務に違反しないための手続を知りたい。
  3. 会社法では取締役に競業避止義務が規定されていますか?

取締役と会社との法律関係(善管注意義務や忠実義務)

 会社と取締役との関係は委任に関する規定に従うとされ(会社法330条)、委任契約に関するルールが適用されます。

 そのため、取締役は、会社に対して、その職務を行うことについて、善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)を負います(会社法330条、民法644条)。特に、取締役は、専門的な能力を期待され、会社の取締役に選任されるため、一般論として、善管注意義務として期待される水準が高くなります。

 また、善管注意義務だけでなく、取締役は、法令や定款等を遵守し、会社のために忠実にその職務を行う義務を負い、これを忠実義務といいます。

取締役の競業避止義務

 株式会社における取締役は、自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引(競業取引)をしようとするとき、会社に対し、重要な事実を開示し、その承認を受けなければならないとされています(会社法356条1項1号)。

 つまり、取締役は、会社に対して競業避止義務を負っており、会社の競業行為を行うときは、事前に重要な事実を開示し、承認を得なければなりません。

 この承認を行う機関は、取締役会設置会社以外の会社では株主総会であり、取締役会設置会社では取締役会になります(会社法365条1項)。

 取締役会設置会社では、競業取引を行った取締役は、その取引後、遅滞なく、当該取引について重要な事実を取締役会に報告しなければなりません(会社法365条2項)。

取締役における競業避止義務の注意点

① すべての取締役が競業避止義務を負っていること

 取締役は、会社法356条1項1号に基づき競業避止義務を負っており、この競業避止義務は代表取締役だけでなく、すべての取締役が負っています。社外取締役も同様ですし、名目的な取締役であっても、同様です。取締役の就任とともに、競業避止義務を負うという点について注意する必要があります。会社の経営を決定していないとか、業務執行に実際に関与していない場合であっても、取締役であれば、競業避止義務を負います。

 もし会社の事業と同種の事業を行おうとするときには、会社に事前に重要な事実を報告し、承認を得ておく必要があります。

 もし承認を得ずに、競業取引を行うと、その取引によって自己又は第三者が得た利益額を会社に生じた損害額と推定され、会社から損害賠償を請求されるリスクがあります(会社法423条2項)。

 会社とのトラブル・紛争を回避するためにも、競業避止義務の内容や範囲を正確に理解しておく必要があります。

② 事後承認ではなく、事前承認が必要となること

 取締役が会社と競業する取引を行うときは、取締役会設置会社以外の会社では株主総会に、取締役会設置会社では取締役会に重要な事実を報告し、事前に承認を得る必要があります。事後承認ではなく、事前承認である必要があります(会社法365条1項、356条1項1号)。

 取締役の競業取引によって会社に損害を与えた場合、事後承認では、総株主の同意がなければ、その責任が免除されません(会社法424条)。

③ 退任後の競業避止義務を課すためには別途、合意が必要であること

 会社法が規定する取締役の競業避止義務は在任中に限定されるため、退職後も競業避止義務を課すためには、別途、合意書や誓約書が必要となります。そのため、退職後も競業避止義務が必要と判断する場合、対象取締役との間で合意書や誓約書を作成しておく必要があります。

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細井 大輔

このコラムの執筆者

代表弁護士細井 大輔Daisuke Hosoi

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